BSマンガ夜話『リストランテ・パラディーゾ』雑感

いつもよりテンポの悪さが気になったが、このマンガから得られる不思議な心地良さを言葉で説明するのはやっかいなようで。ふだんより説明に時間がかかっている感じがした。夏目の目で「見る側の目は黒く、見られる側の目は白く描いている。」「キャラクターの視線がそのまま読者の視線を誘導するようになっていて、要所要所で間(滞遊)を作ることで快感を生んでいる。」との説明に目から鱗。目線で読者の時間をコントロールしていたのか。さすがプロの目はすごい。


映画ライターの皆川ちかが、リス・パラのラストシーンが俯瞰の絵で終わってるから映画的と言っていたが、それに対して、いしかわじゅんが「そんなもん映画的でもなんでもない。マンガでは昔からよくある手法だよ」とあきらかに不機嫌になっていた。確かにリストランテ・パラディーゾにはフランス映画を見た後のような後読感があるけど、構図や演出の類似性から映画的というのはいささか乱暴な気がする。それを言い出したら手塚治虫もさいとうたかお白土三平もみんな「映画的」の一言で片付けられてしまう。全てのマンガは映画のパクリみたいな話になるのでいしかわじゅんは怒ったのではないだろうか。ここではリス・パラの「ゆったりとした時間の使い方・ここち良い余韻・人生の味わい深さ」がフランス映画が大事にしている美意識と似ているね。って話にすれば良かったんじゃないかな。


皆川さんがしゅんとなってしまったのはかわいそうだったけど、いしかわさんにガツンと言われたことはプロの物書きとして、とてもいい勉強になったのではないだろうか。若いうちにあんな大御所と仕事ができたなんて正直うらやましいよ。